小説家になろうを読む35 『修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない』

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mixiで友人Nが最近なろう小説の時代物を読んでいるというので、いくつかお勧めを挙げてもらった。こちらでも挙げたことのある『戦国小町苦労譚』やその中でも必読ものとして『淡海乃海』の名前が挙がった後、私の知らない作品名が出てきた。

そんなワケで『修羅の国九州のブラック戦国大名一門にチート転生したけど、周りが詰み過ぎてて史実どおりに討ち死にすらできないかもしれない』を読み始めたのだが、これがなかなかに辛い。何が辛いといって、土地勘、人勘がまったく働かないのだ。

このお話、九州は豊後・築後を中心に勢力を誇った大友氏のうち、大友宗麟の弟とも従兄弟ともいわれる大友親貞に転生した主人公の物語なのだが、まずこれが私にとっては「誰、それ?」である。しかも物語のエンジンとなるのが「史実通りなら今山の戦いで無残に死ぬからそれを回避したい」という想いなのだが、「申し訳ないけど、その今山の戦いってなに?」てなもんである。

さらに、これに大友氏における守護大名ならではの複雑な、庶家の同紋衆と土着の国人である別紋衆(別姓衆)との対立などがあり、やたらと九州ローカルの登場人物が現れる。それに加え、ふつうのなろう小説なら主人公が成長するに従って登場人物がすこしずつ増えていくのでこちらも追いついていけるのだが、時代物の習いとはいえ最初からドーンと登場人物が大量に登場するのでワケがわからなくなる。しかも戦国の習いで親族はみな似たような名前であるから誰が誰やらわからない。

この辺り、同じ時代物でも『淡海乃海』は主人公の朽木稙綱自体はマイナーだが、周囲の登場人物はそれなりに知られた者だし、琵琶湖周りの地名はまだそこそこ理解できたのでさほど苦労せずに読み進められたのだが、ちょっと旅行に行った程度の九州ではそれもままならないのである。

とはいうものの、初めの九州編を我慢して読み進めて舞台が機内に変わると、途端に見知った名前と地名が出てきて、いっぺんに読みやすくなる。チートも控えめなので読んでいて非常に楽しい。

ところが! 楽しいのも束の間、舞台は再び九州へと戻り、見知らぬ土地で見知らぬ人々に取り囲まれる読み手である私。

しかも、こちらがまったく知らない大友氏のお家騒動・二階崩れの変についての「真相」を滔々と語られるに至っては、『犬上家の一族』で中身を知らずに最後の金田一の名推理だけを読まされたようなもので、もう何が何やらまったくわからない。時代物愛好家や郷土史研究家にとっては楽しめる部分なのだろうけれども。

この辺りの難しい、でも作者は「これが真相だ!」という感じに盛り上がっているんだろうな、という部分を馬耳東風と読み流して、話が四国編に入ると、また楽しくなっていく。

そんな具合で、北部九州在住を名乗る作者の、力が入りすぎている部分が、大友氏に詳しくない人間にはかなり重荷(面白くないわけではない)ではあるものの、確かに地力はあるし読ませる作品となっている。多分、一度最後まで読んでざっと人間関係がわかったところでもう一度読み直すともっとちゃんと楽しめると思うのだが、さすがに読み直すかは疑問ではある。