小説家になろうを読む30『淡海乃海』と『三田一族の意地を見よ』

小説家になろうを読む30『淡海乃海』と『三田一族の意地を見よ』

先月に引き続き今月も仕事がなく、金もないのにヒマを持て余すあまりなろう小説を読み耽っている。

そうした中で最近気に入ってるのがいくつかの時代ものだ。もともと日本の時代ものはほとんど読んだことがなかった上に、日本史の知識もあまりないので、これらを読んでると、新しい知見(とはいえかなり歪んだ知見ではあるが)が増えてなかなかに面白い。

中でも気に入ってるが、『淡海乃海 水面が揺れる時』という作品だ。琵琶湖の北西部、高島から山に入ったところにある朽木谷の朽木氏を2歳で継いだ朽木元綱への転生モノである。転生モノによくある知識チートは少なめではあるが、人材の青田刈りはそこそこ行っており、戦国ゲームの弱小武将での成り上がりモノに近い。

これが私にとって面白い一番の原因は、私の戦国時代に対する知識の無さによるものだろう。そもそも朽木氏という存在を知らなかったので、彼らが琵琶湖水運と日本海の小浜を結ぶ鯖街道の利権を握っていたことや、京を逃れた室町将軍をたびたび匿っていたことをこのお話で初めて知った。

加えて彼らが本拠地とした西近江の地理も、今の湖西線が走っているよね、程度しか知識がなかったために、Googleマップを開きながら読み進むうちに、おお、こんな風に各大名が居たのか、とわかっていくのが実に楽しい。

琵琶湖周辺の観光ルート「鯖街道、朽木の地を散策」 | ホテル琵琶レイクオーツカより

そもそも私のかすかに知っている戦国史といえば、典型的な織田信長史観なので、西国や京都周辺については全く不勉強なのである。浅井朝倉はひとまとめで覚えていたので、どっちがどっちだかろくに理解しておらず、浅井が琵琶湖の北東の長浜辺りを治めていたという理解がなかった。

浅井朝倉でこれだから、六角・三好に至っては名前だけでどの辺りに居たかも知らなかった。それがこのお話を読むことで、南近江、山城、大和の大名・国人の存在がなんとなく理解できていって実に楽しい。

描写が少なくモノローグがメインなので、ちゃんとした時代劇ファンには物足りなく感じることだろうが、私のように当時の戦国史をよく知らない人間が楽しむには、ちょうどいいという作品である。ただ、最近はかなり日本制覇が進みつつあり、織田信長との行動の類似が頻出しがちで、その辺りはちょっと物足りなく感じてもいる。

一方、これと並行して読み出したが、『三田一族の意地を見よ』である。青梅の国人・三田氏三田綱秀の第四子として転生した主人公が、史実通りであれば後北条氏に滅ぼされる家をなんとか生き延びさせようと足掻くうちに、後北条氏に入り婿として組み込まれ、結果的に後北条家の全国制覇を手助けするというお話で、先の自分の知らない土地の話が満載の「淡海乃海」とは対照的に、小田原住まいの私には親しい地名が満載である。なろう系の知識チートがかなり強烈なのが難点ではあるが、まあこれはこれとして楽しめてはいる。

もっとも始まってしばらくとすると、延々と京に上って朝廷工作を続けるものだから、ご当地ものを読んでいたはずなのに一体どこで何をやってるかとんと見当がつかなくなってしまったりもした。とはいうものの、関東に帰ってくればご当地もののおかげで、酒匂川がどうのこうのなどと書かれる度に、おお、あの辺りにそういうものを設置した設定か、と聖地巡礼的に面白さを感じている。

そんなわけで、このふたつの時代物をのんびりと楽しんでいるのだけれど、直近の「三田一族の意地を見よ」の更新(三田一族の意地を見よ – 第百十一話 憂鬱な人々)で朽木一族が登場してため、私の頭の中でふたつが混線してしまって少々混乱しているところだ。このエピソードのあとがきでも、

今回キャラが淡海乃海 水面が揺れる時 に被ってしまいました。

とあるので、作者も少々困っているようだ。逆に言うと問題の存在は理解しているということだから、うまくここを乗り切ってもらって、両方を楽しく読み続けたいのである。